レクサスの最上級車種であり、最高グレードであるLS600hLは何をコンセプトとし、どこへ向かっているのであろう。 対抗車種となるメルセデスSクラスやBMW7シリーズとの違いはどこにあるのか。 
1,500万円(LS600hL エグゼクティブシーティングパッケージ)という価格や車格からして、想定される対抗車はメルセデスSクラス、BMW7シリーズなどの欧州車勢である。 しかし、ライバルたちはツインターボ(S65)であったり、V12エンジンであったり、重い車体をガソリンをブチ撒いてガンガン加速する、非常にアグレッシブな方向性を取っている。
もちろんレクサスもその馬力競争・加速競争に負けまいと、しっかり445馬力という超高出力を発生している。 しかし、レクサスLS600hLについて特筆すべきなのは、そのパワーが2基のタービンや、12筒のシリンダーから作られているわけでない点だ。 レクサスLS600hLはV8エンジン+モーターという組み合わせのハイブリッドエンジンから、その超高出力をプロデュースしているのである。 そう、LS600hLはSクラスや7シリーズとは全く違う方向を見ているのだ。 それは、エンジンをF1テクノロジーを注ぎ込んだV10にするのか、あるいは太いトルクが自慢のV12にするのか、はたまた爆発的な加速が得られるツインターボにするのか、そういった次元の話ではなく、全く新しいコンセプト、つまりハイブリッドエンジンの採用や全く新しいトランスミッションを開発するというレベルのものなのである。
世界の高級車と肩を並べる高出力を稼ぎ出しながらも、そのパワーを稼ぎ出す術は環境にも気を使ったハイブリッドエンジン。 これを知り、レクサスの方向性が少し見えてきた気がした。
さて、方向性が見えてきたところで早速の試乗である。「回り始めた瞬間から最大トルクが立ち上がるモーターの特性を活かし、静かで力強い発進と瞬時に反応するリニアな加速を実現、どんな速度域からも力強く立ち上がります」というレクサスからの資料を読み、どんなすごい加速をするのかと期待した。 なにしろ、『リニアな加速』である。 想像するのは子供の頃に見たスーパートレイン、リニアモーターカーだ。 早速0-60(静止状態から時速60マイル(時速96㌔)に達するまでの所要時間を計るテスト。 車の性能を測るためアメリカでよく使われている)を行ってみたが、実は『体感的には』あまり速く感じなかった。 筆者は普段からターボの爆発的な、いわば乱暴な加速に慣れているため、0-60の加速感は全くと言っていいほど感じなかった。 その代わりに驚かされたのは時速60マイルを超えても、どこまでもエンジン+モーターが回り続け、どこまでも加速していくかのような感覚だ(いや、実際に超高速域まで一気に加速していくのだろう)。 今までのどの車にも無い、非常に新しい不自然な感覚だ。 60マイルを超え、100マイルを超えても変わらぬ加速をし続けるLS600hLに、まさにワープしているような感覚を覚えた。 法定速度の倍以上のスピードが出ても、まったく危険を感じることなくアクセルを踏めてしまうのは逆に危ない気もした。
その後の調べで、実はLS600hLは0-60もべらぼうに速いことが判明した。 筆者が速いと感じなかったのは、静止状態から時速60マイルまでがまさにあっという間で速いと気付くヒマさえ無かったこと、さらに車内の静寂性やステアリングとボディーの安定性から、そこまで加速していることにすら気付かなかったのである。
445馬力。 普通の、たとえば直4や直6にターボ、あるいはV10などだと暴力的な加速になる。 LS600hLの開発者の話では「凄みのある加速」と「恐怖」とは紙一重だと言う。 そして、レクサスは「恐怖」を「喜び」に変えるべく、ハイブリッドという道を選んだのである。 さらにそこにレクサスの理念である「ときめき」と「やすらぎ」を加えるべく、加速時や悪天候時にも安定した走行が可能なオールウィールドライブ(四輪駆動)という方式を採用したのである。
四輪駆動というと、スポーツカーファンからは馬鹿にされそうだが、レクサスはその辺もちゃんと考えていて、通常走行時は前後輪駆動比率が4:6、加速時は3:7、悪路走行時は5:5となっている。 加速時には、背中をグッと押されているような、より加速している感のあるFRのように、悪路走行時はより安定した四輪駆動へと、「ときめき」と「やすらぎ」のための配慮がされているのである。
何かと話題になる世界初のLEDロービームだが、はっきり言ってHIDとの明るさでの違いはわからない(レクサスのHIDは十分明るいから、というのもあるが)。 ただ、立ち上がりはLEDに軍配が上がるし、車速とステアリングの蛇角によって左右に動くヘッドライトは相変わらず便利だ。
内装はマルチ周りはGSと酷似したデザイン。 特筆して使いやすいレイアウトでは決してないがデザイン性は高いので、実用性重視派とデザイン重視派で意見が分かれるところであろう。
インストゥルメンタルパネル上にはタコメーターのほかにハイブリッドスステムインジケーターを装備し、POWER走行しているのか、ECO走行しているのか、はたまたCHARGE走行しているのかがわかる仕組みになっている。
また、マルチインフォメーションディスプレーにもエネルギーフローを表示するモニターがあり、バッテリーの充電状況やエネルギーの流れが瞬時に確認できるようになっている。
細かいことを言えば、オーディオの音量ボタンがステアリングの裏にあるのが少々使いづらい。 これはチューナーの変更ボタン同様、ステアリング上のほうや日常使いは断然しやすいであろう。
内装はブラックとクリームの二色使いだったが、どうにも色味があっていないように感じられた。 しかし、それはドア上やダッシュボード上などの日が当たるところはブラック、ドアパネル下やシート、Aピラー裏など日陰になるところにはクリームを使ったことに気付き、思わずなるほどと思ってしまった。 つまり、日が当たるところは眩し過ぎないようにブラック、日が当たらないところは暗くなり過ぎないようクリームと言ったことなのだろう。 この辺りもレクサス風に言うならば「おもてなし」ということになるのであろう。 個人的には革と樹脂の使い方とデザインが非常に興味深く、気に入った。 まるでチョコレートが溶けてドローンとくっ付いてしまったようなデザインなのだ。 この辺りはシンプル系と作り込み系で個々の好みがある所だが。
前評判と実際に乗ってみての感想は、ほぼ一致するものだった。 レクサスLS600hLは高級欧州車勢に独自の姿勢で戦いを挑み、性能では勝っていると言えると思う。 それは高出力ハイブリッドエンジンもそうだし、コダワリの四輪駆動もそうだろう。 そしてその全てにはレクサスがコンセプトとして提唱する「ときめき」と「やすらぎ」が感じることが出来た。 これだけ一本の芯(コンセプト)がビシッと通った日本車は、これまでに無かったのではないだろうか。 また、アウトバーンの左側車線でドイツ車ツアラーを退かすことの出来る日本車も、これまた今までに無かったであろう。 レクサスLS600hL、日本の自動車史に残る車である。
文:トーキョードライブ スタッフ TOKYODRIVE staff
写真:レクサス Lexus
1997年に発売された世界初の量産型ハイブリッドカー、トヨタ・プリウスから早十年。 その節目となる今年、トヨタのレクサスブランドから
LS600hLが発売となった。 世界初の
LEDヘッドライト(ロービーム)やL-finessを用いたデザインなど特筆すべき点はたくさんあるが、まず初めに筆者が知りたかったのは、LS600hLは一体何をコンセプトとし、どこへ向かっているのか、ある。